WHITE ROOM COFFEE BLOG

コーヒーの抽出に特化した記事をメインに記載します

【焙煎】排気でコーヒーのテイストはどう変わる?

こんにちは、WRCのレオです。

今回は抽出ではなく、“焙煎”です。その中でも排気と言う部分に着目していきたいと思います。

 

 

排気とは

排気とは焙煎機中の空気の流入のことだと思っていただければわかりやすいかなと思います。

コーヒーの焙煎では火力を上げ下げするカロリーの他、排気量をコントロールすることで味わいを作っていくことができます。

焙煎機によりますが、排気を圧力で常に一定に保つ焙煎機や、Loringのような熱風焙煎機は基本熱風で火力を加えるわけですから常に排気は開いてる状態となります。また、国産の焙煎機等では、ダンパーと呼ばれるレバーのようなもので排気量をコントロールするものがあります。

 

排気を操作して起こること

排気は焙煎機中の空気の流れだと先で記述しましたが、ここでは排気量を上下させるとどの様な状態になるかを簡単にご説明します。

 

排気を多くする(開ける):
焙煎機中の空気の流入が増えることになります。その為焙煎中に発生した煙や不純物を空気によってドラム外へと排出されます。
熱せられたドラム中に空気が流入するためドラム内の温度が低下します。
空気とはいえ、熱源によって温められた熱風となるため、コーヒー豆への対流熱としてカロリーが加えられます。

 

排気を少なくする(閉める):

焙煎機中の空気の流入が少なくなることになります。その為焙煎中で発生した煙などがコーヒー豆に付着する場合があります。
空気の流入が少なく、熱源によってドラムが温められ、内圧が大きくなります。
対流熱の割合が少なくなる代わりに、熱せられたドラムからの伝道熱が主な熱源になります。

 

排気量の検証

今回は3つのサンプルを使用し、排気のみを変えた場合、テイストにどのような影響を及ぼすのかを実験してみます。

 

焙煎機

使用する焙煎機は家庭用の焙煎機であるSandbox Smart Roaster R1です。

www.sandboxsmart.com
こちらは台湾製の小型焙煎機で、110Vの電気で動きます。
熱源は3本の電熱で、ドラムは穴が複数空いている網目のものなので、電熱直火式焙煎機となります。

 

焙煎プロファイル

使用豆:グアテマラ サン・フアン ブルボンテキシク ウォッシュド

投入量:60g
投入量の推奨は100gとなっておりますが、家庭用で熱源が電気なのでそこまで火力が強くない為100g投入してしまうと焙煎時間がやや長くなってしまいます。その為少なく設定しました。

投入温度:120℃

火力:投入からボトムまで10% / 排気30% Drying phase:90% 1分〜 

   Maillard phase:80% 5分〜 190℃:70% 8~9分 Development phase:30% 40秒間

 

プロファイル 1(以降1)

Drying phaseの排気を30%とやや閉め気味に設定し、Maillardに入った段階で火力の変更と共に排気を50%に開けます。その後Development phaseで排気を75%に開けて40秒経ったら終了です。

 

プロファイル2(以降2)

Development phaseまで常に排気を50%に設定します。Development phaseに入ったら排気は75%まで開けて、40秒経ったら終了です。

 

プロファイル3(以降3)

最初から最後まで排気を75%に開けていきます。Development timeは全て一緒の40秒です。

 

焙煎履歴

1.

1st Crack:09:03 / 197℃  TRT:09:42 / 198℃

 

2.

1st Crack:09:14 / 197℃ TRT:09:53 / 197℃

 

3.

1st Crack:09:36 / 195℃ TRT:10:15 / 197℃

 

このような結果となりました。
上記でも軽く触れた通り、排気量を増やした3→2→1の順で焙煎時間が長くなっています。
これは単純にドラム内の温度が空気によって温度上昇が悪くなっていることが原因です。

面白いのが、3の排気を75%で統一しているプロファイルのみ1ハゼ開始の温度もやや低い温度で迎えていると言う点です。1と2で1ハゼ開始温度に変化が見られなかったのは、Drying phaseのみ排気が異なるだけで、後半の排気は同じだからだと考えられます。

1ハゼは豆内部に吸収された熱エネルギーが外に向かって放出されることで起こる現象のため、1ハゼ温度を低く迎えたと言う事は3の排気量を多くしたプロファイルの方が1,2に比べて熱効率が高いからなのかもしれません。しかし、表面温度の上昇は緩やかとなる為焙煎時間は長くなると言うことでしょうか。

 

テイストの違い

カッピングにてどのような味の違いがあるのかを見てみたいと思います。

 

カッピングの条件

粉量:11g

湯量:180g

湯温:95℃

挽き目:21 clicks COMANDANTE

ブレイクは4 分で3回上澄みをブレイクし、10分から啜りはじめました。

 

結果

  1. 3つの中で一番味わいがしっかりしており、主に甘さとボディに厚みを感じました。
    フレーバーはエンザイマティックアロマよりかはブラウンシュガーを思わせるシュガーブラウング系の強度の方が高く感じます。アフターテイストにややcitric,malicを感じる印象です。甘さ、酸味共にはっきり感じられる印象です。
    ロースト香はやや感じられ、3つのうち最も香ばしさを感じました。
  2. こちらはドライの状態からも1よりは少し明るめの印象、3よりかはややロースティーな印象を受けました。カップの印象もまさにそのような味わいで、1に比べるとややボディ、甘さが弱く感じ、酸の印象が明るくなり、よりcitric,malicが明るくはっきり感じ取ることができました。
    よく言えば一番バランスが取れていると感じますが、テイストの傾向上、香ばしさと酸味が共存しており、個人的にそれがネガティブな印象を感じてしまい、3つのうちで一番好みの味ではありませんでした。
  3. 3つのうちで一番ボディが軽くなり酸の印象がよりはっきり明るく感じます。そしてとにかくクリーンで綺麗な味わいのコーヒーになりました。
    ドライの段階からもややフローラルでハーバルな印象を受け、カップでもその印象が強く感じられ、同じコーヒーとは思えないくらい、綺麗でクリーンな味わいでした。
    反面、他のコーヒーに比べてやや甘さが足りないのでもう少しDevelopさせた方が良さそうだなといった印象は受けました。

 

まとめ

排気一つでここまでテイストが大きく変わるとは少々びっくりしました。
しかし、この焙煎機もあくまで家庭用であり、できる限り差異なく行いましたが、毎バッチごとのズレは生じています。そして一度の検証だけで判断すべきではないと感じますが、この結果は今後の焙煎傾向に大いに有益な情報になると感じています。

 

この結果から推測できる排気によるテイストへの影響という部分に関しては、排気量を増やしていくと結果的に伝道熱効率を下げる為焙煎時間は長くなります。伝道熱は豆の表面に直接影響を及ぼす為短時間で表面温度を上昇させます。その結果ドライとカップからも感じたように少し香ばしさを感じやすい傾向、そして短時間で焙煎を終了させるためにしっかりとしたメリハリのある味わいを作っているのかもしれません。
逆に排気量を増やした状態というのは温度上昇を緩やかにするため焙煎時間が長くなります。焙煎によって生じた煙などが一切篭ることはないので、クリアな味わい、コーヒーの本来の味わいというのが感じやすくなるのかもしれません。

 

また、1ハゼ温度が変わりました。1ハゼは豆内部の熱量が限界に達した時に吸収した熱量を放出する現象ですので、排気量を増やすというのは、対流熱の割合を増やすことになりますので、豆内部に影響を及ぼしやすいのは対流熱ということになります。
まぁ考えてみればそうですね、フライパンでお肉を焼いた時も短時間で表面に焼き色はつきますが、中はレアなんてこともあります。逆にオーブンなどでじっくりと火を入れて行った方が内外差は小さくなります。